「依頼した解体業者が廃材を不法投棄したら、施主も罰せられるのだろうか」
「見積もりが極端に安いけれど、処分まで任せて大丈夫だろうか」
一般的な住宅解体では、木くず、コンクリート、金属くずなどの処理責任を負うのは、施主から直接工事を請け負った元請業者です。直接契約した会社が解体業者なら、通常はその解体業者が排出事業者となります。
したがって、解体業者が施主に隠れて不法投棄したというだけで、施主が自動的に処罰されるわけではありません。ただし、施主が廃材を敷地へ埋めるよう指示した、違法な処理と知りながら了承したなど、自ら不適正処理に関与した場合は別です。
この記事では、施主と解体業者の責任の違い、危険な説明の見分け方、契約前の質問、不法投棄が疑われるときの相談手順を順番に説明します。
まず、状況ごとの基本的な考え方を整理します。
| 状況 | 施主側の一般的な整理 |
|---|---|
| 解体業者が施主に無断で山林などへ廃材を捨てた | 元請業者側の処理責任が中心。施主が自動的に処罰されるわけではない |
| 施主が「処分費を省くため敷地へ埋めてほしい」と指示した | 施主自身の関与として責任を問われる可能性がある |
| 違法な処理方法と知りながら了承した | 認識、指示、契約などの事実関係によって責任を問われる可能性がある |
| 家具などの残置物を施主が無許可の回収業者へ直接依頼した | 廃棄物の種類や依頼内容を含め、施主側の関与が問題になる場合がある |
| 所有地で第三者の不法投棄を発見し、行政へ通報した | 土地所有者というだけで投棄者になるわけではない |
| 所有地で不適正処理を発見したまま放置した | 土地所有者等には行政へ速やかに通報する努力義務がある |
環境省の建設廃棄物処理指針では、建設工事の排出事業者は元請業者であり、元請業者が自らの責任で適正に処理すると示されています。実際の解体作業を下請会社が行っても、元請業者は廃棄物処理を下請任せにできません。
なお、建て替え工事を住宅会社や工務店へ一括発注した場合は、現場の解体会社ではなく、施主から直接請け負った住宅会社等が元請業者となることがあります。契約先へ「この工事では、どの会社が排出事業者として廃棄物を管理しますか」と確認してください。
廃棄物処理法第16条は、事業者・個人を問わず、廃棄物をみだりに捨てることを禁止しています。山林や空き地へ捨てるだけでなく、次のような処理も不法投棄と判断される可能性があります。
- 木くずやコンクリートがらを山林、空き地、河川敷へ捨てる
- 許可された処分先ではない場所へ廃材を降ろす
- 解体現場や資材置場に廃材を置いたまま、処理する意思なく放置する
- 穴を掘り、瓦、木くず、コンクリートなどを埋める
- 廃材を土で覆い、外から見えない状態にする
- 自社の土地や施主の土地へ廃材を捨てる
環境省が2025年12月に公表した2024年度(令和6年度)の調査では、全国で新たに判明した産業廃棄物の不法投棄は106件、投棄量は約1.4万トンでした。廃棄物の種類では、がれき類と建設混合廃棄物がそれぞれ32件で最多です。解体廃材の不法投棄は、過去だけの問題ではありません。
「自分の土地だから、基礎のコンクリートや瓦を埋めてもよい」というものではありません。廃棄物処理法の投棄禁止規定は、他人の土地だけを対象にしているわけではないためです。
再生施設で適正に加工され、品質と用途が明確な再生砕石を工事材料として使う場合と、解体廃材をそのまま穴へ入れる行為は別です。解体業者から「埋めれば処分費を安くできます」と提案されたら了承せず、適正な処理先へ運ぶよう求めてください。
住宅の解体を解体業者へ直接依頼した場合、通常はその解体業者が元請業者です。主な責任は次のとおりです。
| 解体業者の管理 | 主な内容 |
|---|---|
| 分別・保管 | 木くず、コンクリート、金属、石膏ボードなどを分け、飛散や流出を防ぐ |
| 収集運搬 | 自ら基準に沿って運ぶか、対象品目を扱える許可業者へ委託する |
| 処分 | 許可された中間処理施設、再資源化施設、最終処分場で処理する |
| 委託契約 | 収集運搬業者・処分業者と事前に書面で契約する |
| マニフェスト | 紙または電子で、廃棄物の引渡しから処理終了まで管理する |
| 完了確認・報告 | 処理終了を確認し、廃棄物の処理結果を施主へ報告する |
解体工事の廃棄物の種類と処理の流れでは、分別解体から再資源化・最終処分までを詳しく説明しています。
処理責任の中心が元請業者にあるからといって、施主が何も確認しなくてよいわけではありません。環境省の指針では、発注者にも処理条件の明示、工事前からある家具等の適正処理、適正な費用負担、工事終了時の処理確認といった役割が示されています。
施主が行うのは、処理業者の実務を代わりに管理することではありません。次の三つを契約前後に押さえることです。
- 見積書で廃材処分費と残置物撤去費を分ける
- 運搬者、主な処理先、マニフェストの管理方法を聞く
- 工事後に、廃材の種類・数量・処理先・終了状況が分かる報告を受ける
責任の有無は、指示の内容、違法性を知っていたか、誰とどのような契約をしたかなどによって個別に判断されます。ここでは、施主側にも問題が生じ得る代表例を見ます。
施主が自ら廃材を空き地へ運んで捨てれば、施主自身が不法投棄の行為者になります。「解体で出たものだから業者の責任」とは整理できません。
「処分費がもったいないので、基礎や瓦を庭へ埋めてほしい」と指示することは避けてください。解体業者から提案された場合も同じです。メールや契約書に適正処理を求める内容を残しておくと、認識違いを防げます。
「正規の処分場へ運ぶと高いので、別の土地へ置く」と説明され、それを知りながら契約を続けた場合などは、関与の内容が調べられる可能性があります。疑問を感じた時点で了承せず、処分方法を文書で確認してください。
工事前から家にある家具、布団、衣類、食器などは、建物を壊して発生する産業廃棄物とは区分が異なります。一般家庭の残置物は原則として一般廃棄物です。
施主が処分を直接手配するなら、自治体のルールに沿うか、自治体の許可を受けた一般廃棄物収集運搬業者を利用します。産業廃棄物の許可だけでは、家庭の残置物を回収できない場合があります。詳しくは残置物がある家の解体費用と処分方法をご覧ください。
土地所有者というだけで、第三者の不法投棄の行為者になるわけではありません。一方、廃棄物処理法第5条第2項は、所有・占有・管理する土地で不適正に処理された廃棄物を発見したとき、都道府県知事または市町村長へ速やかに通報するよう努めることを定めています。
発見後も搬入を認めたり、投棄者へ土地を使わせ続けたりすると被害が拡大します。廃材を動かす前に記録し、自治体へ相談してください。
2026年7月22日確認時点の廃棄物処理法では、不法投棄をした個人に5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が定められています。未遂も処罰対象です。法人の業務として行われた一定の場合は、行為者に加えて法人に3億円以下の罰金が科される可能性があります。
この罰則が、解体工事を発注した施主へ一律に適用されるわけではありません。不法投棄をした人、指示した人、不適正な委託に関与した人などについて、証拠と事実関係に基づいて判断されます。
見積もりが安い、紙のマニフェストがない、といった一項目だけで不法投棄を断定することはできません。複数の不自然な説明が重なっていないかを見ます。
| 注意したい説明・対応 | 契約前に聞くこと |
|---|---|
| 廃材処分費が他社より極端に安い | 自社運搬、処理施設との距離、再資源化など安くできる理由は何か |
| 「廃材は無料で処分できる」と言う | どの廃材を、どの施設で、どの方法で処理するのか |
| 処分先や処理方法を一切説明しない | 木くず、がれき、石膏ボードの主な搬入先を説明できるか |
| 「コンクリートは敷地へ埋める」と提案する | 埋設は断り、許可された施設へ搬入できるか |
| 残置物と解体廃材を区別しない | 家具等を自治体のルールに沿ってどう処理するか |
| 工事後の報告はしないと言う | 処理結果が分かる報告書、一覧、写真等を提出できるか |
| 許可・登録番号を示さない | 建設業許可または解体工事業登録を確認できるか |
| 質問するたび説明が変わる | 運搬者、処分先、処理方法の説明に一貫性があるか |
相場より安いこと自体は問題ではありません。自社の重機・車両を使う、処理施設が近い、金属を再資源化できるなど、適正に費用を抑えられる場合もあります。大切なのは、廃材処分費の内訳と安くできる理由が対応しているかです。
電子マニフェストを利用していれば、紙の管理票はありません。また、マニフェストを法令に沿って管理・保存するのは排出事業者である元請業者で、施主が原本を保管する仕組みではありません。
「紙をください」だけでなく、次のように質問すると確認しやすくなります。
紙と電子のどちらで管理しますか。工事後は、廃材の種類、主な処分先、処理終了状況が分かる資料を提出してもらえますか。
解体工事のマニフェストを施主が確認する方法もあわせて確認してください。
元請の解体業者が、自ら排出した産業廃棄物を基準に沿って自ら運搬する場合は、収集運搬業の許可を必要としない扱いがあります。一方、別会社が元請業者の廃棄物を運ぶ場合は、法令上の例外を除き、対象品目を扱える収集運搬業の許可が必要です。
許可番号だけを見るのではなく、「誰が運ぶのか」「自社運搬か委託か」をセットで確認します。
次の質問を、解体見積もりを比較する段階で各社へ同じように聞いてください。
- 許可・登録:建設業許可または解体工事業登録の番号を確認できますか。
- 処分費の内訳:分別、積込み、収集運搬、中間処理、最終処分はどこまで含まれますか。
- 運搬者:御社の自社運搬ですか。別会社なら、どの会社が運びますか。
- 主な処分先:木くず、コンクリート、石膏ボード、混合廃棄物は主にどこへ搬入しますか。
- マニフェスト:紙と電子のどちらで管理し、最終処分まで誰が確認しますか。
- 完了報告:廃材の種類、数量、主な処理先、処理終了状況が分かる資料をもらえますか。
- 追加費用:廃材量や種類が想定と違う場合、いつ、どの資料で説明を受けますか。
見積書に「廃材処分費一式」と書かれていても、直ちに危険とは限りません。ただし、残置物撤去費との区分、収集運搬費を含むか、追加費用が生じる条件は説明してもらいます。解体業者の選び方では、許可・登録や近隣対応も含めた比較方法を整理しています。
契約書の形式は業者によって異なりますが、次の内容を見積書の備考欄、契約書、メールなどに残しておくと、工事後の認識違いを防ぎやすくなります。
解体工事で発生した廃棄物は法令に従って適正に処理し、不法投棄、違法な埋設、野外焼却、無許可業者への処理委託を行わないこと。
工事後、廃棄物の種類、主な処理先、処理方法、処理終了状況が分かる資料を施主へ提出すること。
不審な搬出や埋設を見ても、写真だけで不法投棄と断定し、業者名を公開するのは避けてください。浄化槽や古い基礎の撤去など、正当な理由で掘削する場合もあります。危険な接近や車両の追跡もせず、次の順番で確認します。
安全な範囲で、現場の写真・動画、日時、場所、廃材の種類、車両の色・形・ナンバー、会社名の表示を記録します。見積書、契約書、領収書、メール、工事前後の写真も消さずに保管します。
電話だけでなく、メールなど記録が残る方法で質問します。
- 該当日に搬出した廃材は、誰がどの施設へ運んだか
- 紙と電子のどちらでマニフェストを管理しているか
- 廃材の種類、数量、処分先、処理終了状況が分かる資料を提出できるか
- 敷地内へ埋設した廃材がないことを確認できるか
搬出写真、処理施設の計量票、廃棄物処理実績報告書、マニフェストの終了状況、再資源化等の完了報告などを見ます。書類名よりも、「どの廃材を、どれだけ、どこへ運び、処理がどこまで終わったか」が分かることが重要です。
説明に矛盾がある、処分先が分からない、敷地へ廃材を埋めた疑いがある場合は、都道府県または政令市の産業廃棄物担当部署へ相談します。自治体によって担当部署名や管轄が異なるため、「工事所在地+産業廃棄物+不法投棄相談」で公式窓口を確認してください。
相談時には、契約書、見積書、現場住所、工事期間、写真、車両情報、業者とのやり取り、受け取った処理報告を用意します。
実際に山林へ廃材を捨てている、夜間に大量の廃材を搬入しているなど、犯罪が進行中で緊急性がある場合は110番へ連絡します。緊急ではない相談は、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」も利用できます。
疑いがあるという理由だけで一方的に代金を支払わなかったり、契約を解除したりすると、別の契約トラブルになる場合があります。解体業者が説明や是正に応じないときは、自治体の廃棄物担当部署、消費生活センター、建設工事紛争審査会、弁護士などへ資料を見せて相談します。
工事後の敷地や所有する空き地で、見覚えのない廃材を発見したときは、次の順番で動きます。
- 廃材を動かす前に写真・動画を撮る
- 廃材の種類、量、発見日時、車両の痕跡を記録する
- 自治体の廃棄物担当部署または警察へ相談する
- 追加搬入を防ぐため、安全な方法で入口を閉鎖する
- 行政の確認前に、廃材を別の土地へ移動しない
投棄者が分からない場合や撤去能力がない場合は、解決に時間がかかることがあります。土地を貸しているなら借主にも事情を確認し、早い段階で行政へ相談してください。
解体業者が施主に無断で不法投棄したというだけで、施主が自動的に逮捕・処罰されるわけではありません。一般的な住宅解体では、施主から直接請け負った元請業者が排出事業者です。ただし、施主が投棄や埋設を指示した、違法な処理と知りながら了承したなどの事情があれば、個別に責任を問われる可能性があります。
安いという理由だけでは判断できません。自社運搬、処理施設との距離、作業効率、金属の再資源化などで適正に安くできる場合もあります。処分費が極端に安いのに、処理先や安い理由を説明できない場合は、同じ工事範囲でほかの見積もりと比べてください。
解体廃材のまま敷地へ埋める行為は、不法投棄と判断される可能性があります。施主の土地でも自由に埋められるわけではありません。業者から提案された場合も断り、許可された施設での適正処理を依頼してください。
紙がないという一点では判断できません。電子マニフェストを利用していれば紙は発行されず、紙の法定保管者も通常は元請業者です。施主は、紙の原本だけでなく、廃材の種類、主な処分先、処理終了状況が分かる報告書や一覧を求めてください。
元請業者が自ら排出した廃材を基準に沿って自ら運ぶ場合は、収集運搬業の許可を必要としない扱いがあります。別会社へ運搬を委託する場合は、法令上の例外を除き、対象品目を扱える許可業者への委託が必要です。自社運搬か委託かを先に確認してください。
廃材の種類、運搬者、主な処分先、紙・電子マニフェストの別、処理終了状況をメール等で問い合わせます。回答がない、説明が矛盾する、元請業者自身も処分先を把握していない場合は、工事所在地を管轄する都道府県または政令市の産業廃棄物担当部署へ相談してください。
施主が住宅会社や工務店へ、建て替えと既存建物の解体を一括して直接発注した場合は、その契約先が元請業者として排出事業者になることがあります。現場の解体会社だけで判断せず、契約先へ「どの会社が排出事業者として管理し、処理結果を報告するか」と確認してください。
- e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
- 環境省「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について」
- 環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(2024年度(令和6年度))」
- 東京都環境局「解体工事を行う施主(発注者)の方へ」
- 神奈川県「建設系廃棄物の適正処理について」
- 山梨県「土地所有者の皆様へ(不法投棄対策)」
- 神奈川県警察「廃棄物不法投棄を許さない」
解体工事で発生した廃材の処理責任は、原則として、施主から直接工事を請け負った元請業者にあります。業者が施主に隠れて不法投棄したというだけで、施主が自動的に処罰されるわけではありません。
ただし、施主が違法な埋設を指示・了承した場合などは、責任を問われる可能性があります。不法投棄を防ぐため、契約前に次の5点を確認してください。
- 廃材処分費と残置物撤去費が見積書で区分されているか
- 誰が廃材を運ぶか
- 主な処分先と処理方法を説明できるか
- 紙・電子マニフェストのどちらで管理するか
- 工事後に処理結果の報告を受けられるか
最安値だけで決めず、処理方法への質問に具体的に答えられるかを各社で比べることが、施主にできる現実的な予防策です。
執筆者
執筆:中原 実咲
住宅解体・空き家整理領域 編集ライター
住宅リフォーム会社の相談窓口、地域工務店の施工事例編集、住まい系比較メディアの編集を経て、解体費用・見積書・空き家管理に関する記事制作を担当。費用の幅、追加費用の条件、契約前の確認点を整理する記事づくりを得意としています。
公開日: 2026.07.22